石油ストーブの音を聞きながら、生活している。
といっても、その上で、ぐつぐつ煮えているヤカンの音だろう。
水泡が発生して、ヤカンとストーブの接着面をカタカタ鳴らしている。
一酸化炭素中毒による死の危険を冒しながら
なぜ利用しているのか。
たしかに当初は、エアコン代より安いからと聞いたからだった・・・
でも、消費の多さに今はどうかなと思っている。
検索しても、微妙な書き方ではあるが、
部屋の広さにより費用が異なってくるなどと
書いてある。
だから安いわけではない、
危険性がある。
なのにわざわざまだ使っているのは、なぜ。
香りだ。
香りというと語弊があるなら、
におい。
外出から家のドアを開けた時・・・
ベランダから部屋に入るとき・・・
石油ストーブ特有のにおいがする。
それがなぜか心地いいのだ。
最初は心地よがっていることさえ気づかなかった。
燃料費と空気の汚染のことしか考えていなかった。
でも、ある日、思い出した。
これは小さい頃のにおいだ。
冬になると、嗅いでいた。
昔は、エアコンもなかった。電気ストーブはあたたかくなかった。
学校では石炭が使われていたくらい。
家では、石油ストーブがうちだけではなく、
暖房器具の定番だったろう。
あのあたたかさ。
父と母に、守られていた冬。
それさえも当たり前で、気づかなかった
長ずるにおよんで、
さんざん反抗してきてしまったけれど、
親の希望に反する道を進んでしまったけど、
そして、最後まで和解できなかったけれど
今でも石油ストーブのにおいとともに、
あのあたたかさに包まれている。
父と母は、もうとっくの昔に天国に行った。
その後、俺は自分の所帯をもち、
家庭をもった。
子どもももった。
そして・・・。
一人身となった。
親から愛されていた。
あの当たり前が泣きたくなるほどに当たり前でなかったことはよくわかる。
今部屋があたたかいのは、あの頃を再現しているからに他ならない。
父と母が亡くなって、
およそ25年後・・・
別れる前に、
あの人に
「愛している」と
伝えた。
返事は
「じゃあ、どうして…」だった。
相手の言葉に、その先はなかった。
ただ自分が記憶を消してるだけかもしれないが。
今では、その問いを繰り返し自分に問うて、
答えをシュミレーションしている。
じゃあ、どうしてもっと手伝わなかったの
じゃあ、どうしてもっと優しくしなかったの
じゃあ、どうして文句ばかりを言ったの
じゃあ、どうして仕事がつづけられなかったの
じゃあ、どうして・・・・
じゃあ、どうして・・・・
そしていつも行きつく先は~
俺はほんとうに愛していたのだろうか・・・
オリビアニュートンジョンがおよそ3年前、
2022年に旅立たれた。
彼女の曲で一番好きなのが、
邦題『愛の告白』
『I Honestly Love You』だ。

https://www.youtube.com/watch?v=6pFw6rprqH8
歌手というのは幸せなものだ。
『I Honestly Love You』を
若い頃のオリビアからたどって、
中年期、老年期と聞いた。
さすがに声量は減っているものの、
年を取れば取るほど、『I Honestly Love You』の味わいが出てくる。
そして、ファンも年を取っていくが、コンサートに行きずっとついていく。
死んでからも、こうして、
YouTubeなどのコンテンツを通して、
曲を聞かれる。
♪I love you
I honestly love you♪
その歌詞について、ネットではさまざまな翻訳がつけられている。
愛してる 心からあなたを…
愛しています 正直にあなたを愛しています
愛してる 本気であなたを愛してる
愛しています。 心から愛しています。
・・・・・・
“honestly”を辞書で調べると、
2 (比較なし) [文全体を修飾して; 通例文頭に用いて] 正直に打ち明けて,まったく,本当に.
歳月が流れてしまった・・・
あの人にふたたび言おう
I honestly love you.
(END)
