万国を併せて王たるも菰を被って一椀の主たるも、形の上のことなら蟻の塔の大小も同じで、畢竟児戯に過ぎず、彼を栄とし、此れを辱とし、或いは喜び或いは悲しむは吝な話。ただ一心の天に通ずるものあらば、布衣と雖も決して王者に劣るものではない。
(頭山満の言葉)
[意訳]
すべての国を合わせた広大な国の王になるのも、ぼろをまとったホームレスであるのも、目に見える形の上のことだけならば蟻の塔(巣)の大小と同じで、要するにたわむれに過ぎない。
一方を栄光として、一方を恥辱として、喜び、悲しむのは実にケチな話である。
ただ一心が天に通じている者があれば、ホームレスといえども決して王者に劣るものではない。
【この言葉をあらわすSF的な物語】
20✖✖年、地球では、地球統一政府設立を記念して、地球大統領の任命式が行われた。このために造られた巨大アリーナに世界中から1万人程のビップが集まった。彼らが、地球の99.9パーセントの富を握っていた。
地球大統領が挨拶する。
「私が、このたび、地球大統領に任命されたハワードです。」
満場の拍手。
アリーナの外では、ビップからの寄付を受けるため、世界中からたくさんのホームレスが集まり、投げ銭を受けるための空き缶やお椀(わん)を携えて、待っていた。
一方、地球からはるか遠く離れた宇宙船で、神が天使たちを従えて、モニターに映された地球を見ている。
天使「ここは地球という銀河の果ての太陽系の小さな惑星です。」
モニター画面には、大統領の就任式に集まる地球人たちが蟻のように細かくみえた。
神「やつらは、ごちゃごちゃごちゃごちゃ集まって、何をやっとるのだ?」
天使「地球統一政府大統領の就任式です。会場には、それを祝って、地球中の大金持ちたちが集まっています。ちなみに会場の外には、彼らからの恵みを受けるために大勢のホームレスが待っています」
そのホームレスたちのあたりの一点から光がのび、神の胸につながった。
神「(自分の胸につながった光を見て)なんじゃ、これは!!」
天使「おお、ホームレスの一人に奇特な奴がいて、日頃から、自分の心をたえず見て、鏡のように磨くという修行をしているようです。だから、自分の心が貴方(神)と自ずとつながってしまうようです」
神「(満足そうに)そうかそうか。それなら彼を宇宙大統領に推薦してやろう」
天使「宇宙大統領ですか。それと比べりゃ、地球の大統領は塵(チリ)みたいなものですね。」
神「でも、見てみろ。あの男の豊かな表情を。奴には、宇宙大統領の地位なんていらないようだ。」
モニター画面には男の幸福そうな顔がアップで映されている。(end)
【解説】
神から宇宙大統領(笑)に推薦されなくても、ただ一心が天に通じているならば、貧富や貴賤にかかわらず、その人はもうすでに宇宙の王者なのだ。
そして、天に通ずる心は誰にでも、今すぐになれる。少なくとも一瞬は。思考をしなければよいのだ。または思考にとらわれず流してしまえばいい。
それを繰り返し、永続的に行なえば、明鏡止水、青天白日のような心になることができる。その心は天=神そのものになっている。
